麻原彰晃らの死刑執行に宮台真司が言及 マインドコントロール下にあった死刑囚たちの刑執行は妥当だったのか?
麻原が自ら人格崩壊のスイッチを押したなら?
ジョー横溝:
いずれにしても麻原元死刑囚の容態を巡っては、報道によってふたつに分かれているところだと思うんですよね。
拘置所の中でも非常に本人は元気にしていたとか、もともと拘置所内には専門医が付いているのでそこに関してきちんとチェックしているという報道がなされてる一方で、弁護団それから家族の皆さんも、10年以上本人には面会がかなっていないというところで、今となってはそこに関して麻原元死刑囚の容態が一体、拘置所内でどんな様子だったかっていうのは、客観的な証明が難しいのかなと。
宮台:
竹田さんはどういうふうに思ってらっしゃるか聞きたいことなんだけれど、少し統治権力側の擁護をしてみたい面もあるというわけ。というのは、麻原は間違いなく人格あるいは精神崩壊を遂げていると思うが、自ら主体的に、つまり自ら選び取って人格崩壊を遂げるためのスイッチを押したんだと思う。
彼はマインドコントロールのプロですから、他者に対してはどういうボタンでどういうボタンを押せば、どういうふうな自動機械が動くのかということを知っているわけですね。彼はそういう訓練をすでに受けている。同じような方法論を自分に適応して、自分自身の人格を崩壊させたのだとしましょう。
精神科医の複数の方に聞いています。「そういうことはありえますか」と言うと、全員「ありえます」と。それについての研究は乏しいが、いろいろな似たような精神疾患の症例などを見ると、ありうる。人格障害とかでね。自分が言った嘘を自分で本当だと信じてしまうというのがあったりしますよね。
そうしたものが最初のきっかけになるんですけれども、いずれにしても自分で引き金を引いてしまうということがもしあったとした場合、僕の聞いたお医者さんはあるとしていました。
そうするとちょっとややこしいことが生じるんだよね。確かに今の法的な枠組みでは、刑を執行する時点で受刑能力があるかないかを問題にする。しかしその時点で受刑能力がないように自分で引き金を引いて人格崩壊を遂げた場合、「だから死刑を執行しない」というふうな振る舞いが理にかなっている、つまり合理的であると言えるのかどうか。いろいろな人に聞いても、「ちょっとそれは未知の領域」と言うんですね。
同じようなことで先ほどから話題にしている、洗脳されたわけではない、超常体験や神秘体験をフックして帰依するという状態になり、帰依する対象の麻原彰晃の言うことを聞いたり、忖度競争するようになったっていうことがあった場合、誰でもそうなることがあるわけですよ。
誰でもそうなりうるような仕掛けの中にたまたま身を置いてしまった人間が、罪に問われるべきなのかどうか。現行の法的な枠組みでは、罪に問われなければいけません。刑法第39条、心神喪失者の行為はこれを罰せず。古い言い方だけれども、それに該当しないわけだから。ということで、実は我々の法的な枠組みの想定している自体の外側で問題が起こっている可能性もあるんですよね。
そういう時にどういうふうな態度をとったらいいと竹田さんはお考えになりますか。
竹田:
難しいですね。やはり正式な精神鑑定をやることが第一歩というか、そこからはじまるという感じがしますね。