『2018 FIFAワールドカップ』の結果を受けて元海外プロ選手やサッカー分析家らが徹底総括「戦術的なメソッドが世界中に行き渡った大会だった」
💡ここがポイント
●『2018 FIFA ワールドカップ』を分析する大放談番組が放送
●元海外プロ選手や戦術分析家らが、ワールドカップで行われた試合について徹底分析
●今大会の結果を受けて、五百蔵容氏は「戦術的なメソッドが世界中に行き渡っていた大会だった」と結論付けた。
『2018 FIFA ワールドカップ』決勝戦が実施された7月15日、ニコニコ生放送では、元海外プロ選手や戦術分析家、サッカー本大賞受賞作家らが、ワールドカップで行われた試合について徹底分析・討論する大放談番組が放送されていました。
番組には、サッカー分析家の五百蔵容氏、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正氏、作家の中村慎太郎氏、スポーツライターの長谷川ゆう氏、元プロサッカー選手の丸山龍也氏が出演し、今回のワールドカップはどのような大会になったのか、細かすぎる戦術分析や選手批評を交えて徹底討論しました。
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ロシアワールドカップの総括
中村:
今回の(ロシア)ワールドカップはいかかでしたか。いろんなことが起こって、総括しづらい大会でもあったのかな、というところですけど。
長谷川:
そうですね。特にFIFAランクと関係無かったなという部分で、走っているチームが確実に勝ってきているという部分では見てて楽しい大会だったし、VAR【※】があった分、良くも悪くもキーパーがすごくフィーチャーされる試合が多かったなというイメージです。
※VAR
ビデオ・アシスタント・レフリー。誤審を回避するために導入された、最新の映像テクノロジーを用いた審判補助システム。
中村:
特に前半は、VARが主役みたいになってましたよね。
長谷川:
だからキーパーがPKでシュートを止めたりとかっていう部分でも、キーパーが注目される試合っていうのもすごい多かったなっていう印象ですね。
丸山:
ハリルホジッチ前監督がやろうとしたことを振り返ってみると、今のサッカーの戦術っていうのを、日本に落とし込もうとしたと思うんですよね。
中村:
最先端の手前くらいのやつですよね。
丸山:
ある意味トレンドのところをやろうとしたんですけど、日本はこの大会でやったサッカーというのは、ある意味で新しいタイプの戦術というか、これからこういうふうにサッカーってなっていくのかもしれないなっていう最先端よりも……。
中村:
周回遅れってこと?
丸山:
周回遅れで、また逆に新しいところがあって。監督が直前で解任されたじゃないですか。そういうのがあって、「戦術ってこれからどうなっていくのかな」とか、「結局どっちが良かったのかな」という、含みのある考え方ができる大会だったなと。
今までだったら、トルシエ監督のサッカーはどうとか、ジーコも、ザッケローニもどう? みたいなところだったと思うんですけど。それが、なんかこれもいけるし、あれもいけるんじゃないのっていうところで、ちょっと思慮深い大会に、戦術的にはなったなと。
中村:
本当に戦術的にどうだったかに関しては、流れで見ている中では正直わからないという感じがして、これは詳細に分析する人がいたらいいですけどね。
丸山:
一番最初にメンバーが発表された時に五百蔵さんが言っていたのが、これからのサッカーというのは混沌とした中でやっていって、その中で即興で拾って行くものになるんじゃないか、なんて言っていたんですけど、そういう片鱗が日本代表には見えたし、クロアチアもある意味そういうサッカーだったかな、と。
五百蔵:
そうそう。
丸山:
ちょっと日本の一番いい姿をクロアチアがやっていたようなところもあって。
中村:
僕は大会の総括としていうのは、結構弱者が勝ち上がったというか、いいところを見せた大会だったなというのがあって。人口35万のアイスランドもそうですし、イランとかも結構いい試合してたんですよね。ポルトガル、スペインのいる組だったので、ちょっと厳しかったんですけど。
丸山:
イランは首位発進ですからね。
中村:
イランは弱者とは言い難いですけど、メキシコがドイツを速攻で沈めたりとか。
長谷川:
あの試合は面白かったですよね。
宇野:
ベストゲームでメキシコvsドイツを挙げる人は多いんじゃないですか。
中村:
あとは、コスタリカは実績あるチームですけど、実力的には不利なところで勝ち上がっていて。日本も、まさかベスト16に行くとは誰も思っていなかった。ランクとしては下のチームだったわけで。
戦術的メソッドが行き渡った大会だった
五百蔵:
今大会は戦術的なメソッドが世界中に行き渡った大会だっていうのが、すごいハッキリしていて。
中村:
最低限の底上げがされていましたね。
五百蔵:
そう。自分たちのクラブで、最先端の戦術だったり、基本的なやっておかなければいけない戦術だったりというのも、もう身についている選手がすごく多くて。もともと強い国で、トップリーグのトップクラブでプレーしているような選手が多いような国は、ポジショナルプレーだったり、それに近い考え方の、要するにハイブローな方の戦術、フォーメーションも試合中に何度も変える、みたいな。
中村:
ポジショナルプレーというのは、チェスの駒のように選手を配置するという監督視点での戦術の考え方という理解でよろしいですか?
五百蔵:
まあそうですね。ピッチ全体に均等に選手を配置して、その状態をいろんなシチュエーションで保ちながら、攻撃と守備の連携、循環性を高めるという。
中村:
場所取りゲームのような考え方で試合をする。
五百蔵:
ブラジルもベルギーもそうだったし、早く負けちゃいましたけど、ドイツもそうだった。そういう最先端の方に近い戦術を実装しているチームもありました。
一番多かったのが、ミドルゾーンで4-4-2を組んで、ブロックして計画されたカウンターをするというチームが一番多かったんですけども、僕が追いかけている限りだと、割とどのチームも実際のロシアに入った時の気候条件とかがどうなるかっていうのに応じて、恐らくこのプランをベースにどのチームも複数のプランを持っていたと思います。