Adobe本格参戦でコスプレの未来はいったいどうなる? フォトショップの伝道師と現役コスプレイヤーに話を聞いてみた
コスプレイヤーから見た画像加工とは?
アドビの栃谷氏、鈴木氏に続いて、超ニコクラでのDJを終えたばかりのラブマツ氏に、コスプレイヤーとしての視点から画像加工・編集についてお話を伺った。
――ラブマツさんは画像加工の入り口は映像合成ソフトのAfter Effectsからとお聞きしているのですが、どのように画像加工を始めたのでしょうか?
ラブマツ:
ニコニコ動画で2次元のPVの実写再現をしていまして、それでアニメのOPの再現をしたり、仮面をつけて裸でフンドシだったりという形でやっているんですけど。それを何年かやっているうちに仮面を取ることがありまして、コスプレも始めたんです。元々衣装はずっと作っていたので、顔を出すようになってクオリティを上げるために画像編集もするようになりました。
ずっとAfter Effectsを使った動画の編集しかやったことが無くて、最初は静止画・写真の編集をAfter Effectsでやっていたんですけど、そうすると画質とか色合いとかもこだわれないので、そこからPhotoshopに入れ替えるのに苦労しましたね。
――そこで苦労するというのは珍しいかもしれませんね。Photoshopで本格的に画像加工をするようになってから変わったことはありますか?
ラブマツ:
高解像度の編集ができるようになりました。あとはRAWデータ【※】に挑戦する機会になりました。今まで現像までやっていただいて編集ソフトで加工するという形だったんですけど、それがRAWからいじれるようになったので、そうすると高画質なもののシャドウやハイライトの値も自由にいじれるようになって、本当に自分の思い通りの作品を作れるようになりましたね。
【※】RAW・RAW画像
デジタルカメラで撮影した未加工の生(Raw)の画像データのこと。Webサイトなどで使用されるJPGやPNG画像に比べて、非圧縮で情報量が多い。そのため、見やすくするための画質の調整が行われておらず、データ容量も3倍近くになる。
未加工のRAWデータを自ら編集するコスプレイヤーが増えている!
――コスプレイヤーさんたちの中での画像加工のスタイルの流行りとかはあったりするのでしょうか?
ラブマツ:
カメラをこだわったりとか、やっぱりRAWから編集するというのは増えていますね。コスプレイヤーさん自身が生の状態から調理していくというスタイルがまだ主流ではないですが、そういう人が僕の周りでは増えているかなという印象はありますね。
鈴木:
自分でそうした部分にもこだわりたい方増えていますよね。昔はお願いした人に加工までやってもらうという感じだったんですけど。
――カメラマンさんは撮ってRAWデータをコスプレイヤーさんに渡すということになる訳ですね。
ラブマツ:
そうですね。直ぐにデータを受け取れますし、自分の思ったように加工できますので、Win-Winかなと思いますね。
――カメラマンさんによっては完成した作品を渡したいという人もいるのではないでしょうか?
鈴木:
結構、人によるみたいですね。レタッチまでして渡してくださる人も居て、でもその時もRAWデータは絶対くれるというコトみたいですね。
ラブマツ:
コスプレイヤーさん側でも人によったりはしますよね。絶対RAWで下さいという、僕もそういうタイプなのですけど、絶対に自分で納得いく形に仕上げたいという人はそうだと思います。
カラコンの色を後から変えたり、画像加工を前提に撮影する。
――コスプレイヤーさんの側でも画像加工を前提として撮るというふうに変わってきているんでしょうか?
ラブマツ:
僕は完全にそうですね。もうここは編集ありきで、カラコンも青の濃いのを一つだけ買って後で変えれば良いという風に。服のつなぎ目とかも、準備で苦労する時間は編集に回した方が僕は良いかなと思っています。
――そこはやっぱり衣装の完成度を上げたいという人もいればというところですよね。加工編集で完成度を上げたい人もいると。
ラブマツ:
それも本当に二分化されると思いますし、一長一短あるので、どっちが正しいというのではないと思うんですけど。僕は編集が好きなので、思った通りのものができるという編集が一番好きですね。造形に特化した人はやっぱり自分の作ったモノを写真で表現するというのが至高と思う方もいらっしゃると思いますし、そこはコスプレイヤーのタイプというか2つに分かれて良いんじゃないかと思います。
ハリウッド映画広告レベルの画像合成テクニックまで行きたい!
――ラブマツさんがコスプレ画像加工でこれは凄い、真似したいと思うようなものってありますか?
ラブマツ:
「アベンジャーズ」の広告とか、ハリウッド映画の合成ですね。あれは全部グリーンバックで撮っているですが、無茶苦茶もう分からないくらいのクオリティで、かなり鮮明にやっているので、そういうレベルには最終的には行きたいなと思っています。
鈴木:
トップ中のトップですよね。
ラブマツ:
行きたいですねー! そこを目指して頑張りたいですねー!
――もうコスプレの元の方ですね。
ラブマツ:
本当にもう本家! みたいな。愛が溢れる最上級の作品って、やっぱり本家と見紛うくらいのモノだと思うので、そこまで愛を突き詰めたいと思いますね。
――それはもうプロに成ってしまった方が良いんじゃないかと思ってしまいます。
ラブマツ:
いやー、僕はあくまで面白いこととかに使うので、あとアニメとかそういう好きなモノに全力を注ぐ材料としてスキルを持ちたいなと思いますね。
――最後に、コスプレの画像加工・編集に興味がある、気になるという人にメッセージはありますか?
ラブマツ:
未だに画像加工というのは敷居が高いというか、まだ自分には出来ないと決めつけている方が多くいらっしゃって、スマホとかで簡単にやるレベルでもそれは画像補正に入るモノで、それをいかに細かくやるかという違いなので、そこの敷居を取っ払って編集という世界に入ってみると、意外と自分が思ったようにできるインターフェイスが用意されているので、是非、その世界に足を突っ込んでみて欲しいというのが、僕の想いですね。
トップ中のトップの技術を手に入れたとしても、面白いこと、アニメの再現など好きなものに全力を注ぎたいというラブマツ氏。会場のコスプレイヤーたちの「こだわり」に圧倒されたという栃谷氏。取材を通して一番感じたのは、画像加工の裏側にあるテクノロジーの凄さ以上にコスプレイヤーたちの愛と情熱であった。
編集後記
記事冒頭のスパイダーマン写真の加工結果はこちら。まるでハリウッド映画のワンシーンのよう。
元になった画像はこちら
刀剣乱舞・大倶利伽羅の加工後のもの。幻想的な背景に綺麗に溶け込んでいる。
加工前後の比較画像