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「美少女ロボが生活する世界」を目指して! とあるエンジニアが大学を8留してもまだ夢を追い続ける理由とは?【足立レイ開発者インタビュー】

■「人間が最強」だから等身大で作りたい! 人間を再現する挑戦

――「一個体として完成してるロボット」を作りたいというのが、二足歩行ロボットにこだわる理由なんですね。自立だけでなく「等身大」にこだわるのはなぜですか?

みさいる:
 理由の1つは「存在感」ですね。等身大だと結構目立つんです。

 エンタメ的にもインパクト的にもメリットがあります。

――存在感やインパクトのためなら10メートルくらいの巨大なロボットも目立つと思うんですが、人間サイズにこだわるのはなぜでしょうか?

みさいる:
 やっぱ人間が強いので。人間って世界を支配しているじゃないですか。

――最強というと、私は巨大なスーパーロボットをイメージしてしまいます。みさいるさんが思う「最強」は人の形、人の大きさなんですか?

みさいる:
 多分、ガンダムより人間の方が強いと思います。

――大丈夫ですか!? ガンダム作ってる人とお友達ですけど(笑)。

みさいる:
 1対1だったら、そりゃ、人間サイズのロボットは踏みつぶされちゃうかもしれないですよ。
 でも、巨大なロボットを作ってるのは人間なんだから、
人間サイズのロボットだってガンダムみたいなロボットを作れるはずなんです。

――人間と同様に作る側にもなれるってことですね。

みさいる:
 それって最強だと思うんですよね。
だから、僕は人間ぐらいのサイズ感のロボットっていうのが強いと思ってます。

――なるほど。人間サイズのロボットが集団を作ったらガンダムに勝てるかもなんて、想像したことがありませんでした(笑)。

みさいる:
 結局のところ、現状の世界は人間が支配してるので、きっと人型ロボットは強いはずだと思います。
 あと、自分が作ってて楽しいっていうのも理由の1つですね。

――作っていて楽しい、というのは難しいからこそ挑戦したいということですか?

みさいる:
 難しいからこそというか「できるはずだ」と思っています。
人間という存在が実現できているんだから、機械要素での再現もできる。
 人間だって、何かしらの制御をして、何かしらの機械要素を使って歩いているわけですから。

――人間の再現を目指しているんですね。ほかにも人間を再現しているような、足立レイの機能はあるんですか?

みさいる:
 Xのタイムラインから学習して、自動でポストするパソコンが頭に入っています。

 足立レイのXアカウントを作ってあって、今もきっと動いて、何かしらポストしているはずです。
 何を言ってるか確認するのが楽しみです。

――頭の中に入ってるんですか?

みさいる:
 はい。ここ、頭のてっぺんに手かざしてもらえれば、あったかいのがわかると思います。
 中にパソコンが入っていて、ここから排気してるんです。

――あっ、本当だ。頭から排気……ここに入れてるってことは、脳ですね。

 この頭から、とんちきポストが世界に発信されてしまっています(笑)。

■等身大美少女ロボット制作計画が描く未来

――今回、足立レイは直立に成功しましたが、次に達成したい目標はなんですか?

みさいる:
 足立レイ
の目標だと、次は立った状態で腕とかを振り回したり、アクションしても転ばない状態にしたいです。

――制御を加えるということですか?

みさいる:
 そうです。ぽんって押しても、腕を振って倒れないようにして、身振り手振りしても立った状態にいられるっていうのが次の目標です。

――ちなみにその実験はいつごろ行う予定ですか?

みさいる:
 まず、上半身の動作試験は2024年12月中か2025年の初頭【※】ぐらいですね。

※インタビューは2024年12月に行われました。

――今回の実験で分かったことも多いですか?

みさいる:
 そうですね。電源系の強化や、ギアを金属に替えたほうがよさそうみたいなところは見えてきたんで、そこを完了してからやるかもしれないです。

――第三世代の足立レイから将来、第四、第五世代と計画を進めていくにあたっての目標を知りたいです。「ここが一番の壁になりそう」というポイントはどこですか?

みさいる:
 まず、この大きさとこの細さで歩くっていうのが、技術的に相当難しいです。
 それと同時に歩き方も重要です。
 いわゆるモデル歩きというか、膝をそんなに曲げずにスッスッと歩く「膝関節進展歩行」という歩き方をさせるのが難しいです。

――膝関節進展歩行の難しさはどういうところなんですか?

みさいる:
 膝関節進展歩行は制御的にいろいろ難しいんです。
 僕は制御専門家じゃないので、あんまり詳しいことは言えないですが、まず静歩行と動歩行って歩き方があって、静歩行は足の裏から重心をはずさない歩行なんです。

――静歩行は、片足に重心を乗せた状態でもう片方を前に出して、足を地面につけてから重心を移動させる。いわゆる「ロボット歩き」ですね。

みさいる:
 静歩行は重心が足の上にあるので、安定して歩けるんです。でも人間っぽい歩き方ではない。

――普段、人間がしている「動歩行」は、重心が足の上から外れた「不安定な姿勢」を制御する必要があるんですね。

みさいる:
 さらに制御が難しい理由がもう1つあって、ロボットに関節をまっすぐ伸ばした姿勢を取らせようとすると計算上、関節を曲げる速度が無限大になってしまうんです。
 「特異点」と言うんですが、そういった姿勢にならないようにしたり、何らかの工夫をしないとうまく制御できない姿勢になってしまうんです。

――複雑な制御が必要になるっていうことですね。それだけの課題を乗り越えて実現されるロボットというのは、既存の二足歩行ロボットとはどういう違いがあるんでしょうか?

みさいる:
 まずは見た目ですね。アニメキャラをそのまま再現したようなロボットにしたい。

 今、ほかにあるロボットって、いかにもそういうロボットっぽいロボットって感じですよね。

 アメリカとかヨーロッパとかだと、リアル志向で人間に近い体格と顔のアンドロイドを目指しているんだと思うんです。
 僕はアニメキャラみたいなロボットっていうか、どっちかっていうと「アニメ人」みたいな存在がいてほしいなと思って。

――「アニメ人」ですか。

みさいる:
 リアル志向のがっちりした人間っぽいロボットだけの世界になってほしくないんですよ。
 だから、せめて自分だけでもアニメキャラみたいなロボットを目指したい。

 アニメ作品の中なら、アニメキャラみたいなロボットは存在してるじゃないですか。
 だから、現実にもそういうのがいてもいいんじゃないかと。リアル志向のロボットだけにはしたくないんですよ(笑)。

――「人間に寄せたロボット」ではなくて「アニメ人」っていう存在を実現したいわけですね。アニメの登場人物のようなロボットというか。

みさいる:
 そうですね。今でいうと『VRチャット』のアニメ系アバターみたいな。そういうのをロボットでできるような。
 そういう勢力が一定数いる世界にしておきたい。

VRで楽しめるチャット『VRchat』Steamの販売ページより引用

 人間そのままな見た目のロボットだったら、結局、人間と同じ形のものが増えるだけで、見た目が変わらないから面白くないと思うんです。

――見た目を多様にしてやろう、ということですか?

みさいる:
 10人に1人ぐらいは、アニメ人のロボットを使って生活していて、もっと人工知能が進めば、自立したキャラクターそのものみたいな存在も生活している世界が面白いんじゃないかな。

VRchatで使用できる足立レイのアバター(Boothの販売ページ) 提供:みさいるさん

――もし本当、そういうロボットが作れるようになったっていうときに、生身の人間とどんな関係を築いていってほしいと思いますか?

みさいる:
 アバターとして使うなら普通に生活していく「アニメ系のロボットをアバターとして使ってるだけ」っていう感覚の社会
ができたら面白いんじゃないかなとは思います。
 AIを搭載した完全に自立したモノも実現していたら、僕的にはそれも面白いと思います。

――自我を持ったAIロボットに、かわいいアニメキャラが混じっていたら面白そうですね(笑)。

みさいる:
 あとは、足立レイは服とかファッションにもこだわって作ってるんです。
 そういう自我を持ったロボットが存在したら、人間と同じように商品を買ったり、消費活動をすると思うんですよ。

足立レイのスカート。実際に組み込まれている電気回路と同じ回路図がデザインされている。

――ファッションで流行の服を新しく買ったりとか?

みさいる:
 服を買って毎日着替えたいとか、靴を新しくしたいとか。
 生活の中でそういう欲求というか、必要性が出てくるじゃないですか。

――自分で行動を決めるところまでAIが進化したら、確かにそうなりそうですね。

みさいる:
 そうなってくると普通に経済的にも役立つ存在になるんじゃないかなって思うんです。
 人間と同じように商品を必要とするロボットが増えたら、人口が増えたのと同じような効果があるんじゃないかと思ってます。

――新鮮な視点ですね。AIに自我ができたら「あの服欲しいな」とか「あの靴欲しいな」みたいな消費側になることもあり得ますね。

みさいる:
 生きていく、存在していくためには空間とエネルギーと物品を消耗するんで、消費する存在になると思うんですよね。
 だから
恐らく人間と同じような扱いになるんじゃないかなと思います。
 生身の人間とは消費するものが違う、新たな人間的な存在として社会の中に組み込まれて動いてくんじゃないかなと思います。

――自立したAIが誕生しても、人間の生活はあんまり変わらない?

みさいる:
 すでに人間が作っている社会に自我のあるロボットが入っていく形になるので、基本的なところはあんまり変わらないんじゃないかと思うんです。

 人間と変わらない自我を持った存在が作られた場合は、人間の中に溶け込んでいくような世界になると思います。
 むしろ、ぞんざいに扱うわけにいかないじゃないですか。人間と変わらない存在なら。

――しかも、見た目はアニメキャラみたいな、かわいい女の子ですからね(笑)。

みさいる:
 何でもしてあげたくなる(笑)。
 なので、人間の仕事は楽になるとかよりは、そういう存在が増えるだけな気が何となくします。

 恐らく最初、人工知能がどういう進化をするかによって大きく方向性が変わると思うので、将来が本当にそうなるかは全くわからないです。
 でも、人工知能を積んだロボットが社会の一員として動き出すようになったら、面白いと思います。

 ただ、僕はハードウェア作ることが任務だと思ってるので、そのハードウェアを人間が遠隔で動かして、という方が関心が向いてます。

――自動で動く方ではなく、人が遠隔で動かすアバター的な使い方ですね。

みさいる:
 ロボットの身体を社会で使っていくことができれば、いろいろな人の活動が変わるので、社会も変わって面白いかなと。

――きっかけは「人形が欲しい」だったわけですが、ここまでの開発で様々な苦労をされていますよね。何がみさいるさんをそこまでさせるんですか?

みさいる:
 「あこがれ」でしょうね。そういうロボットがいたら楽しい。
 お茶でも飲みながら話してみたいなっていう、あこがれです。

 そういう時間をいつか実現するためだったらいくらでも頑張れる。で、実現できたらその後の世界が楽しみになるじゃないですか。
 僕、人間だけが繁栄していく世界はあんまり面白くないなって(笑)。

 アニメ系のロボットが跋扈(ばっこ)してる世界になったら、この先、世界が面白くなると思うんです。そうしたい。

――人間だけの世界じゃないぞ、と(笑)。

みさいる:
 発展の末に人間みたいなロボットが人間と置き換わるだけだったら、多分つまんない。
 人間に文化的に愛されて、その末に生まれたこういう美少女キャラみたいなロボットが一定の割合を占めていたほうが楽しい世界じゃないかなって思います。

■足立レイを通して見える「アニメ人がいる未来」

――「アニメ人がいる未来」に近い感覚を持っている人って、「足立レイ」という存在を楽しんでいるファンの皆さんかと思うんです。足立レイのファンから、何かコメントとかメッセージのようなのって、もらったりするんですか?

みさいる:
 今でもクラウドファンディングのページを更新したり、最近はFANBOXに記事を投稿していて、それで「進捗見てます」とかコメントを貰います。
 あと、先日も直立試験の動画を上げたんですけど「支援してよかった」みたいなコメントをいただきました。

――Xのポストも大反響でしたね。特に印象に残ってるメッセージとかってありますか?

みさいる:
 足立レイ
の顔の皮膚を作っていたときのことで、ホットプレートに乗っけて焼くというか温めて、皮膚をクレープみたいに作っているんです。

足立レイの顔に使われている人工皮膚 提供:みさいるさん

――そういう作り方なんですか!?

みさいる:
 その様子に「おいしそう」っていうコメントがいっぱいついてて(笑)。
 自分も若干「料理みたいだな」とは思ったんですけど(笑)。

――自分でも思ってたんですね(笑)。

みさいる:
 本当に想定以上のコメント数がついてて、外国の方からも英語とか中国語みたいのでも「これはパンケーキだ」みたいな(笑)。
 足立レイの顔の皮ファンアートみたいのが出ちゃって、思ってたのとは違う方向に発展していきました(笑)。

――足立レイがそれだけ受け入れられているですね。「等身大美少女ロボット制作計画」は、第一世代も第二世代も初音ミクでしたが第三世代で足立レイというオリジナルのキャラクターにしたのはなぜですか?

みさいる:
 そろそろキャラクターを借りるんじゃなくて、自分で作っていく時期がきたのかなと思いまして。
 そういう意味の「自立」も込めて「足立」という名前にしました。

――「自分の足で立つ」で「足立」ですか。

みさいる:
 足立レイ
は僕に作られている存在ですけど、できることなら自分で勝手に動いてほしいと思っています。

提供:みさいるさん

 僕は自主性のある存在を作りたいと思っているんです。勝手に動いてくれたらそっちのほうが面白い。

――もし、いろいろな障壁をクリアできて、完全に自我を持った存在ができたときに、どういった振る舞いをしてもらいたいと思いますか。

みさいる:
 それはもう全くわからないですね。
 どんな言動をしだすかは、本当に自立しているなら設計した段階ではわからないはずなので。

 なので、どうしてほしいとかはあんまりないです。
 ロボットが自主性を持つ時が来たら、どういうことを言い出すのか。楽しみです。

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