初音ミクが跳ねるように軽やかに歌う1曲『半夏生』――リリースカットのピアノが心地よい令和の夏ソング
文/村上麗奈

リリースカットピアノの音色が心地よい清涼感を感じさせるイントロに続き、初音ミクが跳ねるように軽快な歌声で奏でるのは抒情的な情景と、抒情とは正反対の昨今の酷暑。
月森水貴の描くイラストは、青い空から降り注ぐ日光の強さを思わせるビビッドな色調。残響のない鍵盤の音色と併せて、最近の直接的な太陽の強さを思わせる。

1サビにて<もうこんな暑さは来ないでほしいと思っているけれど><このまま地球は燃えてしまうのかな>といったストレートな歌詞を浴びたあとの、夏の夜の景色を歌う2番での<木々がゆらり、風がひらり吹いていく>といった歌詞は、夜の心地いい風を実際に体感するような臨場感がある。
<春風 雪解け 大人になってからも 節目にはこうも情緒が揺さぶられていく><明日も 来世も 祈っている 晴れ渡る空を>と、別の季節や未来に思いを馳せてしまうのはこの夏の現実逃避からか、あるいは四季折々とともに生きてきた者としての癖のようなものなのか。

酷暑を憂うとともに、移ろう季節のノスタルジーを想起させる「半夏生」。かつて夏ソングとして爽やかに歌われた煌びやかな暑さがフィクションのものとなりつつある今、激しい夏を歌詞に載せ抒情的に仕上げた、令和の夏ソングとも言うべき楽曲となっている。
■information
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