静謐なピアノの音色と畳みかけるビートが魅力的な1曲『羽喰いの天使』AI ナースロボ_タイプTのウィスパーボイスに「歌声がクセになる」の声
今回は、芥田レンリさんが2025年7月17日に投稿した「羽喰いの天使」を紹介する。
モノクロの色調で統一されているミュージックビデオの中央に立っているナース姿のAI ナースロボ_タイプTをボーカルに迎えた本作は、静謐なピアノの音色と畳み掛けるビートの共存から、叫びでもあり祈りでもある想いがひしひしと伝わってくる作品だ。

「倉成町私立病院」に勤務するボーカロイドで、医師によって作られたナース型アンドロイドという設定のAI ナースロボ_タイプT。
鳴り続ける心電図の電子音や<聴診器 破れたカルテ 錆びた注射器 揺らめく心電図>などのフレーズはまさに多くの死の瞬間に立ち会ってきたAI ナースロボ_タイプTの視点に立った描写になっている。
まず、印象的だったのが、1番冒頭の<私は飛べない天使>という一節の手前に添えられる溜息。そこには、天使でありながらも救えない命ばかりを見続けてきたAI ナースロボ_タイプTの、どうしようもない無力感が滲んでいた。儚さの滲む声はウィスパーながら、時に力強さが感じられるのも心に訴えるポイントだ。

本作の特徴のひとつにもなっている硬質なビートやノイズ、グリッチといった歪んだサウンドが爆発する中盤のブロックは、救いたいのに<何処にも連れてはいけないから>とただ傍観することしかできないことに対する“悲鳴”そのものに聴こえる。決して泣かない、けれど確実に泣いている。そういう不思議な感覚。もっともインパクトがあるのはサビの<生命しないで 生命しないで>というパワーフレーズだろう。
本来、文法として成立しないこの言葉が、震えるような声で歌われることで、非言語的な感情が立ち上がる。ローで無機質な音像のなかで、唯一あたたかく響くのが、この願いの声なのかもしれない。テンポチェンジを持たせた構成も、心拍の乱れや生命の灯がゆらめくさまを表現しているかのように思えてきて没入感も強い。そして、AI ナースロボ_タイプTの存在意義と願いがダブルで重なるクライマックスの先、またひとつの命が終止符を打つ音が残る。

<生命しないで>という非言語的で無機質な印象を与えるAI ナースロボ_タイプTのボーカル。一方で、その声の奥には、痛いほどに血の通った、人の温もりに似た心が見え隠れしていると感じて、胸にこみ上げるものがあった。そんな不思議な力を持ったこの曲は、妙に人らしく、リアルだった。
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