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『アリババ』『百度』etc…知ってるようで知らない中国企業の特徴を中国人民大学研究員が解説

アリババ――元英語教師のカリスマが舵を取る

中川:
 アリババ創業者、ジャック・マーさん。天才の元英語教師ですね。本当にカリスマと呼ばれているくらいです。ちなみに我が国の一番時価総額が高いトヨタ自動車は2051億USDからの、アリババの時価総額は5167億USDです。

山本:
 あと、達磨院【※】ね。

※達磨院
ジャック・マー会長が人類の未来のための研究として設立した施設。研究分野は、量子コンピューター、人工知能、アルゴリズム、ネットワークセキュリティ、ビジュアル・コンピューティング、自然言語処理など。

中川:
 徳が高い。脱貧困政策としては、農村地域に無償みたいな形で、自分たちでパソコンを持って行って、そこの地方の名産品をネットで売ってもらおうという、なかなか面白い動きになっていて、脱貧困という対策も政府と一緒にできている。

 オリンピックのワールドワイドパートナーなので、今回の平昌五輪からバックヤードのシステムをアリババがやるということで、政府と適度な距離感ですね。

山本:
 金融改革を迫りつつ、しかし適度に……。

中川:
 そうですね。最近は近くもありつつ、ちょっと離れつつ。天才ですよ。

テンセント――アリババ最大のライバル

中川:
 目立ちたがり屋が多い中国企業家の中で、テンセントの創業者、マーファータンさんはあまり表に出てこないんです。

山本:
 謎が多いんだね。

中川:
 でも時価総額は、今5581億USDということで実はアリババを超えています。バイドゥが先ほどお話しましたように、自動車自動運転の分野で動いていますが、テンセントは「医療に行く」と宣言しました。

 ドイツのベンチャーのVTOL機【※】にも投資をするような変わった動きをしていて、何でやっているのかよくわからないのですが、中国共産党第十九回全国代表大会に前後したニュースを取り上げると、こういったところが出てきます。

※VTOL機
垂直離着陸機(VTOL機、Vertical Take-Off and Landing)はヘリコプターのように垂直に離着陸できる飛行機のこと。V-22(通称:オスプレイ)もこれに含まれる。

ジンドン――社長がSNS女子と結婚! 「SNSの言語統制なし」を証明

山本:
 ジンドン、一番気になっています。

中川:
 「BATJ」のJですね。創業者はリュウチャンドンさん。最近食い込んできました。金額的にはまだまだですけれど、それでも相当な額ですよね。

山本:
 スライドには「ノリノリの目立ちたがり」とあります。

中川:
 「奶茶妹」はナイチャンメイって読むんですけれど、ナイチャーというのはミルクティーなんですね。メイというのは妹、可愛い女の子という意味。それで、この女の子がミルクティー女子なんですよ。

山本:
 可愛いじゃん!

中川:
 清華大学で、この女の子がちょっと写真を撮ってSNSでアップロードしたんです。そうしたら瞬く間に「可愛い」って広がって……。清華大学といえば、日本で言えば東京大学、京都大学のような。

 才色兼備というか、優秀で気さくにミルクティーを持ちながら写真を撮って……これが広がったんですね。それで、「結婚したい」ってジンドンの創業者が求婚して結婚しちゃった(笑)。

山本:
 何だこいつ(笑)。

中川:
 中国のSNSは言語統制などと言われていますが、全然そういうのがなくて、こういう現象が普通に起きるんです。

山本:
 中国のSNSなんてしょっちゅう政府が統制していると思っているから。ミルクティー女子について、共産党は何も思わないの?

中川:
 全然。日本と同じくらいのゴシップネタも普通に起こっちゃう世の中なので。まだ若い企業ですが1700億円を投資できるので、それなりの会社です。一帯一路【※】の「西方」に関する物流網と協調ということで、天津技術開発区で人工知能の物流センターをはじめました。

※一帯一路
中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」の意味)と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(「一路」の意味)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進する計画。それぞれ2013年に習総書記がカザフスタンのナザルバエフ大学とインドネシア議会で演説したもの。

山本:
 でも、ミルクティー女子、可愛いわ(笑)。

中川:
 ネットで検索してもらうと……すごいですよ(笑)。こんな感じで4社を紹介しましたが、これを覚えてください。

巨大なガラパゴス経済を生き抜いて“極楽鳥”となった中国企業

中川:
 今日はアイリサーチというところが出した、人工知能の産業関連図、企業マップをご紹介します。たとえば、基礎層、技術層、応用層というものがありまして、その中に入っているのはどの企業かということで、日本勢は当然ほとんどなくて、車のところでトヨタが入っているくらいです。

 それ以外は欧米と、中国国内の企業。巨大なガラパゴスですが、ガラパゴスと言っても日本みたいに失敗のガラパゴスではないです。

 1年ちょっと前のデータなのですが、これはネット普及率です。7億5000万人ぐらい。

山本:
 全人口13億のうちの5割を超えていますね。すごいね。

中川:
 すごいでしょう。だから普及率も桁違い。中国ネットというのは、薄く広くでも、それだけ極楽鳥になっているという状況を示しています。

 ネット利用者の収入はどれくらいかと言うと5000元ですから、だいたい月の収入が8万円ぐらいですかね。日本と比べるとやっぱり少ないですよね。でも、8万円であったとしても人口規模や利用者数から考えると、結局それだけで十分にペイできちゃうという話ですね。

山本:
 これだけ巨大なガラパゴスにもかかわらず、13億人もいて……恐ろしい話です。

中川:
 数の力、ファンダメンタル【※】っていうのはすごいという話です。このような形でガラパゴス内では熾烈な戦いがあります。

※ファンダメンタル
経済用語で雇用・生産・物価などの基礎的事項という意味。

山本:
 なんだか三国志の図みたいですね。

中川:
 はい、そんな形で戦っていますね。

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