『あずきちゃん』『ナースエンジェルりりかSOS』…作詞だけじゃない! 秋元康とアニメの関係をおたささが解説「どこでも振り幅を持っているのはすごい」
ラジオパーソナリティのおたっきぃ佐々木さんと、声優の天海由梨奈さんが出演するニコニコ生放送番組「やっぱ、アニメでしょう」。
アニメに関する今と昔をたどる「アニメ今昔物語」のコーナーにて今回ピックアップしたのは、AKB48グループや坂道シリーズのプロデューサーで、番組の企画構成やドラマの脚本なども手掛ける秋元康さん。さまざまなアーティストに歌詞を提供する秋元さんですが、意外にも作詞家デビュー作はアニメ作品のキャラクターソングでした。
「アイドルソングとしても素晴らしいし、アニメソングとして世界観にはめても素晴らしい」「全ジャンルどこでも振り幅を持っているのはすごい」とおたっきぃ佐々木さんが秋元康さんの経歴とその作品たちを熱く語ります。
アニソンとしてもアイドルソングとしても素晴らしい世界観! 秋元康作品を一挙紹介
おたっきぃ佐々木(以下、おたささ):
「こんなところにも秋元康さん」ということで、今の世の中、お名前はみなさんご存知だと思うんですよ。
天海:
逆に知らない人のほうが少ないんじゃないですか?
おたささ:
秋元さんといえば今ではアイドルプロデュースの人というイメージがあるじゃないですか。でも、結構アニメ関連の仕事なんかもなさっているということで、秋元さんのアニメ仕事をスタッフが調べました。
まず、秋元さんの業界デビューは高校生の頃なんですよ。ニッポン放送『燃えよせんみつ足かけ二日大進撃』への投稿がきっかけで、ニッポン放送へ出入りするように。後に放送作家奥山侊伸の弟子となり、大橋巨泉事務所の放送作家グループに所属した。
その後大学に進学し、放送作家として活動をはじめた当初は、放送作家をアルバイトとして考えていた。当時のサラリーマンの4倍近い収入を放送作家業によって得ていた。
天海:
ちなみにこの時のサラリーマンの収入ってどれくらいなんですか。
おたささ:
この頃はバブリーな時代なんですよ。バブルのはじまるちょっと前ぐらい。業界も羽振りがよかった時期。
天海:
と考えると、かなりですよね。
おたささ:
大学生の時に年収が1000万くらいの計算になりますね。当時は仕事をすればするだけお金がもらえたので。
天海:
大学生で1000万!
おたささ:
わりとラジオが強い時代でスポンサーがいっぱい付いていたので、お金がよかったり、深夜手当があったり。大学進学したくらいだから、深夜番組もたくさんやっていらしたはずなので、結構なお仕事をなさっていたんじゃないでしょうかね。そして作詞のほうですが、実は1981年にフジテレビ系列で放送されたアニメ『とんでも戦士ムテキング』の挿入歌『タコローダンシング』がはじめての作詞家としてのクレジットということです。
(画像はとんでも戦士ムテキング | Amazonより)
挿入歌なんですけれども、『タコローダンシング』ってサブキャラのテーマソングということだと思うんですけれど。まあすごいところだなと。でも翌年、いきなりなんですよ。1982年の稲垣潤一『ドラマティック・レイン』、1983年には長渕剛『GOOD-BYE青春』で、作詞家としての知名度を得る。1985年からは女性アイドルグループのおニャン子クラブの楽曲を手掛け、メンバーを次々とソロデビューさせた際に、全楽曲の作詞とプロデュースを担当した。
天海:
ここから伝説がはじまっているんですね。
おたささ:
とはいえ、後に総合プロデューサーとして関わるAKB48とは異なり、「おニャン子クラブはチームの一員で共同作業である」とし、「自分は仕掛け人ではない」と説明している。そうなんですよね。作詞と放送作家という立場だったりしたんですよね。なので、プロデューサーは別のところにいて、その指示に従って全部やったという感じだとは思います。
アニメや漫画の企画原案や原作担当などもいろいろなさっているのですが、これがちょっと面白いんですよね。2002年の『シックス・エンジェルズ』。マイナー作品だとは思うのですが、サイバーパンク系というか、そういったところです。あと2007年の『ICE』というアニメもあるんですけれど、わりとドカンとはいっていないのですが……原案としてクレジットされています。
(画像はシックス・エンジェルズ | Amazonより)
それで、ここからなんですよね。アニメ原作になっている『OH!MYコンブ』『カラオケ戦士マイク次郎』『そのうち結婚する君へ』『あずきちゃん』『ナースエンジェルりりかSOS』『まりもの花 〜最強武闘派小学生伝説〜』、企画監修で『AKB0048』。
(画像はナースエンジェルりりかSOS | Amazonより)
原案のほうは“男子脳”というか、男の子が好きそうな世界観を持ってくるんですが、原作のほうになるとめちゃくちゃ“少女脳”なんですよね。『あずきちゃん』や『ナースエンジェルりりかSOS』もそうですけれど、少女漫画とかが多いじゃないですか。『OH!MYコンブ』『カラオケ戦士マイク次郎』はどっちかというと、小学生向き。
(画像はOH!MYコンブ | Amazonより)
そう考えると、すごいんですよね。わりとアイドルとか扱っているからアイドル系でくるかと思ったら、全然アイドル系の作品がないんですよね。
天海:
確かにあまり関わっていないですね。
おたささ:
『AKB0048』は別としてね。これはほぼ関連という部分であると思うので。
(画像はAKB0048 | Amazonより)
天海:
そうですね。AKB48があってのアニメですもんね。
おたささ:
それ以前はアイドル系はないんですね。そのへんが面白い。『カラオケ戦士マイク次郎』も、ちょっとだけ出てきたけれど、それは微妙に難しいなと思うので。おニャン子クラブとかで、ソログループというか『ハイスクール! 奇面組』の主題歌とかは、全部担当なさっていた。そういう意味では世界観をうまく作詞に仕込むという、アイドルソングとしても素晴らしいし、アニソンとして世界観にはめても素晴らしいみたいなところがいいなと思う。
別紙で作詞したアニソン一覧というのがあるんですよ。『技ありっ!』『渚の『・・・・・』』『のっとおんりい★ばっとおるそう』とかの『ハイスクール! 奇面組』作品はもちろんですが、『蒼き流星SPTレイズナー』の『メロスのように -LONELY WAY-』、『機動戦士ガンダムΖΖ』の『アニメじゃない〜夢を忘れた古い地球人よ〜』『時代が泣いている』もそうですね。
(画像はハイスクール!奇面組 | Amazonより)
あとは『ナースエンジェルりりかSOS』の『どーにか こーにか』。『ケロロ軍曹』の『ケロロダンシング』、『勝利の花びら』、『忍たま乱太郎』の『0点チャンピオン』とか。 調べると、わりと幅がすごいんです。そのへんはすごいなと。
天海:
『マギ』とかもやっているんですね。
おたささ:
そうそう。だからこの人は、どこまで引き出しを持っているんだろうと。体もでかいけれど振り幅もでかいみたいな。少女漫画家さんに少年漫画とかを頼まないじゃないですか。ジャンルを乗り越えてやる人はいたりするんですけれど、最初から全ジャンル、どこでも振り幅を持っているのはすごいなと。そういう意味では尊敬しています。羨ましい部分もいろいろとありますけれどね。
そう考えると面白い人で、今、そういう人が他にいるかというと、なかなか難しいんじゃないかなと。仕事を選んでいるとは思うんですよ。何を基準にしているかはわからないんですけれど、その選ぶ基準が面白いなというのが正直なところです。作る人って、基本は得意ジャンルにいきがちじゃないですか。でも、ちゃんとある程度の世界観を作り込んでやるというのはすごい。
ということで、「こんな人もいた」みたいな。今も元気に頑張っていますけれど(笑)。
スタッフ:
バーチャルアイドルにも手を出して。
おたささ:
そうそう。こういう人を掘っていったりすると、この人がどういう世界観を見ているのか、この頃にはこれが当たると思っていたんだなとか、この前後でこういう作品があったからこういうのをやりたかったのかなとかを読んでいくと、面白いと思います。