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『侵略!イカ娘』の触手の威力を科学的に検証 海に浮かぶ岩を一撃粉砕する威力は戦艦大和の主砲460発分!?

イカ娘の発光能力

 イカ娘の発光能力はホタルイカ由来ということだ。ホタルイカ発光の全容は解明されてないが、一般的にルシフェリン・ルシフェラーゼ反応によるものだとされている。

 ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応とは、ごく簡単に言えば、

「ルシフェラーゼを触媒にルシフェリンが酸化し、生成されたオキシルシフェリンが励起状態から基底状態へ遷移する際に電磁波(光)を放出する」現象

 のことである。

 これはホタルイカをはじめクラゲやホタルなど様々な生物発光に用いられており、冷光とも呼ばれ発熱も少なく非常に現実的な能力なのである。

 ところがイカ娘はなぜか目(の周辺)までもが光っている。目は純粋な受光機関なので、これでは発した光が直接網膜を焼き、まぶしいどころか何も見えない!

 シンディによると、イカ娘の発する光は40000[x(ルクス)]相当だという。ルクスという単位は色々条件があるが、ここではイカ娘の体表面の場合としておこう。

 それではまずイカ娘が発光のために消費したエネルギーを求めてみよう。

 イカ娘は身長135㎝で、その標準的な体型であるとする。すると、条件から、触手も考慮に入れて考えると、イカ娘の体表面積はおよそ2[m2]程度となる。

 したがって、イカ娘の全身から光が均等に放たれているとすると、イカ娘が発するエネルギー量は116.8[w]となる。

 さらに、イカ娘の発光効率が同様のLL反応をもつホタルと同じ40%程度だとすると、イカ娘が発光に使ったエネルギーは1秒あたり292[J]である。

 これを分かりやすく換算すると、イカ娘が発光できるのはエビ一匹で約2分ちょい。意外と短い!

 もしイカ娘を照明代わりに使おうとすると、一日6時間つけるとしたら1ヶ月に必要なエビの数は実に4700匹! 安い冷凍エビを使ってもエサ代が月に14万円近くかかってしまう。

 というかそれ以前にイカ娘照明には致命的な欠陥がある。それは明るすぎるということだ。晴れた日に外に出て太陽を見上げていただきたい。季節や気候にもよるが、この明るさが1万[lx]とも言われているのだ。

 こんな明るい物が近くにいたら明るすぎて何も見えない! 長時間イカ娘を直視すれば視覚機能に障害が残るのは確実だろう。

イカ娘には、およそ体重と呼べるものがなかった

イカ娘:
  体が軽いと重い物を持ち上げたり、激しい動作をするときに体が持っていかれてしまうでゲソ。だから外にいるときは、いつでも触手が使えるようにある程度重くしているのでゲソ。

 この能力、自然界の鉄則である質量保存の法則に真正面から喧嘩を売っているようなものじゃないか!これに抵触しないためには、外界との物質のやり取りが必要となる。イカ娘の体格はおおよそ身長135㎝、体積30L、基準体重30㎏として、まずは軽くなる場合を考えよう。

 イカ娘は最小で0.5gまで軽くなれるので、このとき彼女は体重の99.9983%を数秒の間に失ったことになる。この比率は日本の人口が2000人になるようなもの。

 さて、生物が身体を欠損せずに体重を失うとき、最も扱いやすいのは水だ。すなわち体内の水分を対外に排出することで体重を減らそうというわけだ。

 しかしこの方法だと、イカ娘の体は99.99%が水でできていることになる。これじゃあイカっていうよりクラゲだな。しかも、数秒で減らすのだから体温で蒸発させるほかないが、この体重を一気に減らすとなると、必要なエネルギーは実に7500万[J]。えびフィレオにして50個分である。

 これは成人男性が300kmほどマラソンしたときに消費されるエネルギーで、ハイキングだけでヘトヘトになっていたイカ娘にとってはあまりにも苦行。

 しかし、体重を増やすのはもっと大変だ。イカ娘は最大で体重を20トンまで増大できるが、むろん増大分の19970㎏をどこかから持ってこねばならない。

 ためしに空気を吸って質量を得る場合を考えると、必要な空気は1500万[L]にものぼり、体格を維持すべく圧縮すれば体温は数万度、内部圧力も数10[MPa]。これでは体重を増やすどころか爆散する焼きイカになりかねない。

 ここはより密度の高い物質を取り込むべきだろう。ではこの時の密度に匹敵する物質とはなんなのか。それを調べるためにこの時の密度を求めてみると……670[Mg/m3]!? こんな物質はどこを探してもない!

 これはなんと太陽の中心核密度の4.4倍。太陽ですら2500億気圧・1500万度など、想像を絶する環境にあるのに、その4.4倍とかイカ娘の体内はどうなっとるんだ!

 これだけのトンデモ現象をいとも簡単に制御してしまうこの腕輪は、恐らくあの3バカですら解明は難しいだろう。

 さて、クラゲになったり太陽になったりあらぬ方向へ話が進んでしまったが、軌道を修正しよう。引き続いて見ていきたいのは、イカ娘は飛べるのかということである。

 劇中では体重を軽くすることで空を飛んでいたが、本当に可能なのか。それを知るヒントは風船にある。

 イカ娘もヘリウム風船も飛ぶ原理は同じで浮力を利用している。浮力とは流体(空気)中の物質が押しのけた流体の重さ分、重力と逆に働く力のことだ。

 すなわちイカ娘の密度が空気より小さければ浮くことは可能なのである。では、イカ娘の密度はというと、0.5gのとき0.0167[kg/m3]。なんと最も軽い水素より5.4倍も軽い! これなら難なく空を飛べるぞ。

 と、喜んだのもつかの間。実はここまで軽くなってしまうと、楽しい遊覧飛行どころか地獄の旅になってしまうのである。なぜなら、イカ娘には僅か37gの浮力しか働かないが、これは彼女の自重の実に74倍。彼女の身には体重60㎏の人が4.5トンの力を受けるのと同じことが起きるのである。

 ここでは計算を簡単にするために一瞬で0.5gになったとする。するとどうなるのかというと、

 彼女は浮力によって開始1秒でマッハ1.9まで加速し、一気に高度300mまで達する!

 その後もぐんぐん加速し、8秒後、高度9000mの点で速度は最高潮に。その速度実にマッハ6.5! イカ娘の表面温度は2000度近くまで上昇し、こんがりイカ焼きの完成である。

 ここから重力が浮力を上回り始め、約4分後、最高到達点である高度31000mに達する。高度31000mとは、気温が-70度にもなる極寒領域。今度は即刻冷凍イカである。

 しかもここまで高度があがると大気圧は地上の0.3%ほどしかなく、やわらかいであろうイカ娘の体積は400倍に膨張し、身長9mの巨大イカ娘が誕生するというか普通破裂する。

 さて、ここまでヒドイ目にあってきたイカ娘だが、降りるのにもさらなる悲劇が待っている。例えば、早く帰ろうといきなり体重を20tに戻したとする。すると、イカ娘のサイズで20tもの質量がある場合、約90秒後に655[m/s]で相沢家に激突する!

 その時のエネルギーは43億[J]に相当し、直径30[m]の岩石をも穿つ! 間違いなく相沢家は木端微塵であろう。

 ここは空気よりやや重い50g程度の体重でゆっくり降りてきていただこう。帰宅は6時間後とちょっと遅いが、この重さならば落下速度も5[km/h]と非常に安全に降りられる。

 しかしそれでもイカ娘は相沢家に帰ることはできない。なぜなら上空には空気の流れがあるからだ。その中でも特に強いものにジェット気流がある。その範囲は厚さ数キロに及び、風速は夏場で30[m/s]前後だという。

 このジェット気流の影響を考えると、6時間後に彼女が降り立つ場所は遥か彼方、千葉県いすみ市八万岬の沖合30kmである。体重を不用意に変化させると、焼けるわ凍るわ遭難するわでいい事なし。皆さんも、痩せ過ぎ・太り過ぎにはくれぐれもご注意を。


 イカ娘の生態を科学的に検証してみた結果に、コメントでは「結論:イカ娘かわいい」「色々考えることが出来てよかったよ」「宇宙人てことでおk」「おもしろかった、ありがとう!」といった感想が寄せられました。

 検証をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

【空想科学】”イカ娘”の生態を検証してみた【侵略!イカ娘】

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