すごーい! 『けものフレンズ』大ヒットの理由に漫画家が気付いちゃったよー! 「哲学をぶっこんでるのに表面的には、わーい! すごーい!と言ってるのが痛快じゃない?」
「すごーい!」「たのしー!」といったフレーズが大流行し、その独特のユルさから「見るとIQが溶ける」というような評価を集め、熱狂的な盛り上がりを見せているアニメ『けものフレンズ』
3月15日配信の『ニコ論壇時評』では、現役の漫画家・山田玲司氏が社会現象を巻き起こしている『けものフレンズ』を考察。「日本人は疲れすぎてるから、ケモノまで戻らないと癒やされないんだ」と持論を展開した。
『けものフレンズ』と『ラ・ラ・ランド』と『君の名は。』の違いとは
山田:
けもフレすごいね。アニメ探偵がすっかりジャパリパークから帰れないみたいな。ジャパリパークで遭難しているという話ですけど。今回は『けものフレンズ』、『君の名は。』、『ラ・ラ・ランド』と、3作品で比較をしてみようと思うんだけど。
『けものフレンズ』は、幼稚園にチューニングしていますね。『けものフレンズ』というのは、旅をしていますけど。基本的に言っていることは、「世界はすごい」ということ、「みんな友達」ということを言ってるってことですね。
『君の名は。』は中学生にチューニングしてて、何をやっているかというと、「きっと出会えるさ」ということを言っているんですね。きっと出会える、「わーい出会えた!」って所で終わるから、これ実は恋愛はじまってないんです。片思い映画の決着みたいな感じになっているとけど、見事にジャパニーズは、童貞で終わるでしょ? これ。
『ラ・ラ・ランド』になると、ちょうど高校生ぐらいですね。高校生の「夢は叶うんだ!」 みたいなところから、大学生ぐらいのところまでの社会に出て。夢をあきらめないで、就職もしないで頑張ろうぜ! みたいなところが『ラ・ラ・ランド』で。
ここの違いが、興味深いよね。これって、アメリカを初期化したいなって言うときの初期化というのは、言ってもセックスはしていますから。日本の初期化はケモノまで戻りますから!
一同:
(笑)
山田:
だから、日本の疲れ半端ないって話ですよ。
乙君:
そこまでいかないと癒やされないんだ。
山田:
『ラ・ラ・ランド』みたいに夢は叶うぜ! のところまで戻ったって、「いやいや、もういいですから~」と。
乙君:
そんな絵空事いいですから。
山田:
「きっと出会えるからさ。」「前前前世から決まっているからさ」とか、言っても。「いや、もう、そういうのはいいんで…」って、みんなで「わーい!」「たのしー!」の方が良いってね。
一同:
(笑)
山田:
それくらい疲れているんだよね。日本人を救ってくれよ!本当に大変だよね。ジャパニーズも。
乙君:
なるほど。その分析は、すごく面白いですね。これより下はないですよね? アンパンマン?
山田:
いや、この下になると『ニャッキ』とか 『はらぺこあおむし』みたいになっちゃうよな。
表面的には、わーい! すごーい! って、言っているところが痛快じゃない?
山田:
要するに、人のこと構ってられなくなっているというのは、実を言うと、結構きついなって話になるよね。どういうことかというと、他人が不幸だっていう状態というのは、いつか自分も不幸になる可能性も常に秘めている。
そうすると、やっぱりジャパリパークのみんな幸せ、すごい友達というところに憧れを持つというのは、すごくわかるんだよね。だって、食べられちゃうフレンズは、いないんだもんね。だから、お腹空いて死にそうなフレンズみたいなものも出てこないわけじゃん。
お腹はすくだろうけど、本当に、ギリギリに来ているなと。優しくて、楽しい3つの作品が暗示していることは、非常に背景的にヤバイ。俺たちは、他者を受け入れる容量が極限まで、少なくなってきてしまっているんじゃないか? という感じだよね。
だから、ボランティアしてる人を意識高い系とか言って切ってしまうのは、まだ容量がある人がうらやましいってところがあると思う。他人に、構っていられるとか、 余裕があっていいねぇというところまで、追い詰められているというのが、マジョリティになっているというくらいの空気感みたいなのは、感じるよね。というところですよ。
乙君:
『けものフレンズ』は、まだどうなるか、わからないですけどね。
山田:
だから、『けものフレンズ』について話したのは、哲学ぶっこんできて、巻き込んで、何かを伝えようというクリエイターの意思を感じたから。ちょっと面白いなと思って。
表面的には、わーい! すごーい! って、言っているところが痛快じゃない? これ、なかなかロックだなと思って。