「VALUで“大儲け”はやりにくい仕組みになってる」『VALU』中の人・小飼弾氏にサービスの現状について色々聞いてみた
VALUとは“株”ではない
山路:
投資家のやまもといちろうさんも結構VALUのことについてTwitter上で色々突っ込んで弾さんにやり取りしていましたよね。ブログでVALUのそういう仕組みについて、どうなのかってことをやまもとさんが異議を呈して、それに弾さんが答えるというものでしたが。
小飼:
VALUとは一体何なのかというのは、結構説明に窮するところはあるわけですよ。市場で取引するので、「これは株っぽいものだな」というので、「株みたいに」という言い方を我々もしてきました。
ですが、ここにきて株とは違うということで、その誤解をもっと積極的に避けなければいけないなと思いました。例えば、1VA持っていたのを2VAにしたら、1VAで得られるものの倍を発行した人から、もらえるかと言ったら、全然そんなことないですからね。
山路:
優待は、それこそ義務じゃないと仰っていましたよね。
小飼:
義務にはできないんですよ。
山路:
金融の法律でそういう決まりがあるから?
「VALUの主張より日本の憲法が優先される」『VALU』リードエンジニア・小飼弾氏にシステムについて色々聞いてみた
小飼:
いや、もっと根源的なものです。日本国憲法ですね。どういうことかと言うと、もし仮にVAというものが財産権であるという風に認められたとしましょう。VAというのは、その人の人権を例えば1千個だったら1千個に割って、ばら売りするものでしょ、という風に言われたら、そのVAを全部買い占めた人というのは、その人を奴隷にできてしまいますよね。
山路:
言ってみたら企業の株を全部買収したのと同じような状態になっているということになってしまう。
小飼:
ところが人は会社ではないわけです。会社ならバラ売りしてもOKです。会社には人権がないから。
山路:
法人格はありますけれどもね。
小飼:
法人格はあります。法人格は行使できますけれども、それは、あくまでも株主が選んだ代表者を通してということであって。
山路:
これ、今コメントで「最初にVA持っている状態は資産を持っていることになるの」という質問が来ていますけど。
小飼:
資産扱いにはなりませんね。その場合というのは。だからこういうのもなんですけど、自分の握手券、握手券ですらないな。握手券であれば握手するという。
山路:
義務が発生する。
小飼:
だから自分のブロマイドをたとえ千枚持っていて、これを何枚か売りますよと。買った人というのは自分以外の誰かにもそれを売っていいというのは、その点ではトレーディングカードに近いですね。
山路:
確かに「自分のブロマイドを刷っているみたいなもの」っていう比喩はいいのかも。
小飼:
ブロマイドを持ってきた場合というのは、それにサインしますよ。これが優待なんです。
山路:
ちょっとわかった気がします。
小飼:
将来法律で自分の持っている権利の一部を、義務を伴う形で人に配ったりできるようになるかもしれません。でも今のところ、法律でなくて、さらにその上の憲法まで照らし合わせても、自分のすべてをばらして売るというのはできません。
VAはそういったものではありません。ですが、これは非常に誤解しやすい考えだというのも痛感しています。僕自身、山田真哉先生と話していた時、そういう疑いを持っていましたから。
山路:
これさっきのブロマイドの例えで言うと、例えば野球選手のサインボールみたいなものって高値で取引されるようになったりということありますよね。
小飼:
2個持っているからといって、2回握手してくれるかというと、そういったことはないですよね。
山路:
だけど、例えば高いサインボールを買った場合、それって資産としてカウントされるのではないのですか? 例えば美術品みたいなものって高い金で美術品を購入したら、それって自分の資産として計上されるわけですよね?
小飼:
いや、それが資産だったと気が付くのは、それをもう一度転売してからなんですよ。売れなきゃ資産にならないんです。こういうのもなんですけど、その辺の石を拾ってきてこれは美術品だって主張するのは、これは現代美術ではありですよね。
山路:
『無題』とか題を付けて。
小飼:
でも、その時点では資産ではないんですよ。売って値が付くとその時に資産として見られるようになるんですよね。
山路:
仮に、そのVAみたいなものが資産としてみなされることがあり得るケースというのは、VALU以外でそういうのが取引されるようになったらってこと。
小飼:
そういうことですね。外部流通性がないと資産にまではならないんですけど、今のところVAというのはVALUの外に持ち出せないんですよね。
だからVALUとVALUのユーザーとの間でやり取りできるものというのは実はBTCだけなんです。あくまでもVAというものは、VALUの中を行き交っているだけなんですよね、今のところは。
どんなゲームでも、ルールを理解しているものが勝者になる
山路:
「VAの流動性は市場の流動性に比べたら皆無じゃないか」というコメントが寄せられています。
小飼:
仰る通りです。だから本当にマネーゲームをしたかったら、法によって守られ、法によってルールが定められた市場というのがいっぱいあるんですよね。
山路:
株なり先物なり……。
小飼:
そうなんですけど、そういった世界でも例えばFXをひとつ取ると、FXというのは株や外貨とは、ちょっと扱いが違うんですよね。
あれは基本的に雑所得になっているんですけれども……ところが上場されているFXというのがありまして、「くりっく365」というやつですね。そちらの方は株と同じ扱いなんですよ。
山路:
難しい(笑)。
小飼:
難しいというか、ちょっとずるいでしょ、それって。で、実は税法の世界にはそういったものがどっさりあるんですね。
山路:
結局そういう話を聴いていて、私もすべてのことを理解したわけじゃないんですけど。
小飼:
さっきも言ったように、どっちでどう申告するのかとか、申告の時のその辺のブレと言うのは、税理士によっても税務署によっても、出てしまうものなので……。
山路:
それにしてもルールを理解している者が、常に有利になる。ルールを理解する者が勝者になるみたいなところが、こういうゲームではありますね。
小飼:
それは、どんなゲームでもそうなりますよね。
山路:
そのルールっていうのが、ビットコイン、仮想通貨みたいなものとか。
小飼:
ゲームを知っていると「ずっと俺のターン」ということもできちゃうわけですよね。